No.6585 マルちゃん 緑のたぬき天そば 輸出仕様

No.6585は東洋水産、マルちゃん 緑のたぬき天そば 輸出仕様。前回のNo.6584で緑のたぬき東版を紹介し、その際地域に応じて四種類の味を作り分けている旨説明したが、実はさらにもう一種類、輸出版が存在する。

右は現行国内版(東)形状は同じ▲

フタのグラフィックは現行の国内版とはやや異なり、外周の縁の部分が白い。これは1980年に緑のたぬきが登場してからの様式であったが、1999年版以降外周の白帯は廃止された。一方1994年版から調理例写真が載るようになり、1997年版では調理例写真に箸が添えられてサイズが大きくなった。

今回の輸出仕様版のフタは、1994年版の小さな写真サイズに1997年版の箸が添えられた写真を適用し、英文を添えたものだといえる。フタの表面は現行国内版と比べてツヤがないが、昔の国内版もこうだった。

一方、側面の印刷は発売以来単なる緑色の帯しか無かったものが、1997年版から「緑のたぬき天そば」の字が入るようになったので、この輸出版も1997年版以降のものを参照して作ったもののようだ。カップの形状は全く同じで、裏面底の刻印まで同一だった。

つまりは二十数年程前のパッケージデザインを未だに使い続けている訳である。これは本品がコストを掛けて頻繁にアップデートする必要の無い、言い換えれば戦略的にあまり重要な製品ではない、という証でもある。今回の輸出版に関してネットで検索してみても情報が殆ど出てこなかったことからして、生産数量が僅少であることが伺える。

今回の品はオーストラリアで購入したものだが、バーコード数字はEANではなくわざわざUPCを取得していることから北米市場に出すことを前提とする製品である。但しUPCの業者項(19076)は米国のMaruchan Inc.(41789)とは異なるため、同社(米国法人)と直接の関連は無い様子。あくまで日本の東洋水産が流通や販売を管理する製品のようだ。

ちなみに、赤いきつねに関しても同様の輸出仕様が存在する。

食べてみて、国内版の東とは違う。そして西や関西、北海道とはもっと違うだろう。スープの塩分が強くなってやや尖った味になった反面、ダシは薄くなった印象。これは輸出製品として敢えて味を変えた(or 規制対応のため成分を変えざるを得なかった)からか、外観と同様に味も20年以上前からアップデートしていないため現行の国内版と乖離してしまったためなのかは判らない。でも同時に食べ比べてみると現行国内版の東の方がずっと口当りが優しくてマイルドだ。

▲輸出版は天ぷらの調理例写真と現物が違う
カマボコも無い

麺は細めの角断面で、軽い食感だけども存在感はある。日本国内版とほとんど差が無い印象で、個人的には好感が持てるもの。個体差の範囲かもしれないが若干香りが弱いというか安っぽいようにも感じられたが、これは輸出版が生産後の流通条件が過酷だったとか長い時間が経過したためかもしれない(賞味期限は日本だとカップ麺は生産後六か月と一律に決まっているが、海外では販売される地域によって基準が異なる、十ヶ月とか一年とかメーカが任意で設定するとか)。

ちなみに今まで出前一丁や中華三昧、サッポロ一番等で日本国内版と海外市場版とでは麺の色が全然違う!とさんざん言ってきたのだが、今回の緑のたぬきに関しては麺の色がほぼ一緒だった。

スープは、味や香りの方向性は国内版の東と大体同じであるのだが、だしが薄くて塩分が強い。比較するとちょっと尖って痩せた味という印象。国内版の東にはホワッとした包まれ感があるが、これを間接的でもどかしいと感じる人もいるだろう。但しこれらの差はスープを交互に飲み比べて判ったもので、時間を空けて食べ比べたら判らないかもしれない程度のもの。七味唐辛子はどちらも大して辛くは無いが、華やかな香りは国内版の方が強いように感じられた。これも作ってからの経過時間の問題かも。

▲左が輸出版、右は国内版の東

天ぷらの大きさは全く同じΦ80mm(乾燥時)。トッピングの赤い揚げ玉は輸出版の方が多いが、緑の青のり揚げ玉は省略されている。国内版は東・西・関西・北海道とも全て青のり揚げ玉が入っているので、輸出版は専用の天ぷらを別途調達しているらしい。食べてみても海老の殻の香りや舌触りが無く、赤いのは色だけかもしれない。フカフカした台座の部分は大差無い印象だが、輸出版の方は香りに新鮮さが無く、作ってから結構時間が経ったのかな?とも感じた。あと、今まであまり気にしていなかったけれども、無いと知ると実はカマボコが良い脇役であったことに気付かされる。

各要素の僅かな違いが積み重なって、総合評価は国内版東の★3.0に対して今回の品は★2.5としたが、決定的な差があるわけではない。若干の味の違いはあれど、異国の地における代替用途としては十分に満足して食べられるものであり、またこの製品の主用途はこうした在留日本人に対するものだと思われる。いわば東洋水産のサービス事業だね。

もう一つ、2018年の秋に復刻版の緑のたぬき天そばが発売され、これは外出先で食べたために本ブログでは紹介しなかったが、今回の輸出版は現行の国内版東よりもこの復刻版に近いようにも感じられた。

食べた後でいろいろ調べていたら、国内版には原材料として豚肉の記載があることに気が付いた。米国への輸出は豚肉および鶏肉成分が入っていると問答無用でダメなので、輸出版はこの点についての対応がなされている筈である。


この記事を読んで、輸出版の緑のたぬきを食べてみたくなった方へ:海外といえども基本的に普通のスーパーではまず売っておらず、アジア系・日系の食品店をくまなく探すようにして下さい。事前にこうした店舗の場所を調べておくことを勧めます。こうした店では即席麺に限らずカレーとか缶詰とかお菓子等で、日本の企業が日本国内では販売していない製品に遭遇する機会が頻繁にあります。

国名 日本
ジャンル カップそば
EANコード 7 19076 02002 6 (UPC)
会社名 東洋水産
製品名 マルちゃん 緑のたぬき天そば 輸出仕様
謳い文句 Oriental Noodles 風味豊かな大きな天ぷら
調理方法 熱湯3分
質量 Net99g
熱量 470kcal (1968kJ)
Na 2.44g
付属品 粉末スープ、七味唐辛子。天ぷらは混込済
ノンフライ麺 ×
湯切り 不要
細めの角断面、輪郭は明確で、軽い食感だが十分な存在感がある、国内版とほぼ同じ
汁・ソース 国内版東と似ているが塩分が強くてダシが薄め、やや尖った印象、七味は効果が薄い
具・その他 天ぷらは揚げ玉の香りが弱い、蒲鉾は省略、外国での代用品としては十分、望郷の品
総合評価 ★★☆2.5
試食日 2019/12/25
賞味期限 2019/12/08
入手方法 2019/07/21 Cairns (Australia)
税込購入価格 4.28 AUD (≒325 JPY)